日本FIT会


ニューヨーク州立大学FIT学長
ジョイス・F・ブラウン氏講演
「次代を担う人材をどうつくるか ― FITの革新的取り組みは」

 
FITは、ファッション業界がまだ非常に繁栄していた1944年に創立されました。「将来、業界をリードする高度な専門能力を持つ人材が不足する」と予見した業界有識者が「ファッション・デザイン」と「アパレル生産」の2コースで開校したのです。

 

その後、業界の変化と進化に伴い、教育範囲もレベルも格段に広がり、現在は46の学位コースと、1年制、2年制、大学院の課程があります。いまやライフスタイル産業となったビジネスを反映して、専門領域もデザインからファッション・マーチャンダイジング・マネジメント、玩具デザイン、コンピュータ・アニメーション、写真、広告、国際貿易、ホームプロダクト開発、インテリア・デザイン、ジュエリー・デザイン、化粧品・香水マーケティング&マネジメント、等などに広がっています。
そのほか、非学位コースとして、生涯教育をめざす修了証書コースや短期講座も多く、SNSなどの最新動向や、テーマを絞った講座も提供されています。

 

伝統的コースで、変貌したのは、パターンメーキング。業界のニーズの減少と変化により、学位コースから外して修了証書コースにしました。ICTを活用してパターン作成からグローバルなコミュニケーションまでを手掛けるテクニカル・デザイナーが重視されるようになったからです。
最近新設された修士コースには、「宝石学」、そして世界で唯一のコース「サステイナブル・インテリア環境」などもあります。

 

FITの強みは創立時からの「業界との密接な連携」と「一般教養の重視」にあり、業界人による多様なアドバイザリー・ボードが設置されて、企業との協働プロジェクトやインターンも活発に行われています。「一般教養の重視」にも力を入れています。学生が物事を理解するだけでなく批判力を持って分析・把握し、論理的問題解決を行うには、これが不可欠だからです。

 

環境が激変するなか、FITでは2020年へむけた人材育成の戦略ビジョンを関係者全体の参画で構築し、5つの目標をたてました。(1)学究的コア(一般教養)の強化、(2)学生中心の文化(Student-Centeredness)、(3)FITをクリエイティブ・ハブとして強化、(4)学生の戦略的リクルート、(5)戦略計画実現のための執行部門のサポート、です。

 

さらにFITは、その実現に不可欠な「未来の教授陣」に求める5つの資質を明確にしました。 (1)グローバリズム=「世界市民」をつくる能力、(2)指導構想力(Instructional design)=未来の学生が必要とするものを想像し、組み立て、コミュニケートする能力、(3)学びを豊かにする=学生の学びに関する情熱、学生をひき込み啓発する能力と態度、(4)プロフェッショナリズム=業界活動の新潮流を含む専門知識と能力、(5)テクノロジー=自分が指導する分野の技術用語や手法に明るいこと。

 

これらの資質を有する新規フルタイム教授を、現在の20%増に当たる40名採用の計画です。
「2020年に入学する学生は、いま8歳。彼らに何を、どう教え、どのような成長を促すかは、いま真剣に取り組むべきこと。戦略目標を着実に実行にうつしている」と学長は締めくくりました。

 

←戻る

Comments are closed.